合気術とは 、その指導方法

合気術の定義

合気術とはいかなるものか、たくさんの先生方がそれぞれに異なる説明をされているので、こんな基本的なことですら簡単には言い切れません。しかしそれを敢えて言い切ってしまえば、

「頭(意識)で制御した力を使って掛ける技」と私は定義します。

つまりただ単に力を加えて相手を崩したり倒したりするのではなく、力の加え方、つまり力の伝達目標、伝達経路などを頭で決めて相手に伝える技です。まだ難しいですか?

それではこう言い換えて見ましょう。

「通常の柔術技ならば、達人が掛けるのを見ていて、それとそっくりに掛ければ技は掛かります。しかし合気術の場合は、外から見ていてそっくりに真似ても、つまり測定器などで掛かる力の大きさと方向を正確に測って、それとまったく同じに力を作用させても技は掛かりません。なぜならば合気術では力は掛ける当人の頭でイメージされた方法で伝達されるからです。」

このことから以下の重要な結論がでます。

「合気術は物理や力学の法則からでは説明も解明もできない」

合気術を力学の法則や定理から説明しようとする試みは従来から沢山見られますが、其のどれもが失敗に終わっているはずです。 何故ならば合気術は物理や力学では説明できない”意識で制御された力“を使うからです。ですから合気術の原理を説明するのに、意識を感じることが出来ない人間以外の構造体を例にとって無理やり力学の法則を当てはめて解説するのは当然無意味なことです。合気術の原理を本当に分かった人でしたら、初めからそのような無駄な試みは絶対にしないでしょう。また逆に、力学や物理学で説明がつく技は合気術とは言えません。それはあくまでも柔術の技です。

得られる次の重要な結論は、

「意識で力の伝達を制御する技であるから、手や腕の動かし方をいくら教えても技を教えたことにはならない」ということです。従来の指導法は、積み重ねた経験から得られたところの“合気術が掛かりやすくなる手や腕の動かし方”という、きわめて回りくどい間接的な方法で教えていたため、教わるほうも習得が容易ではありませんでした。なぜなら、手や腕を教えられたとおりに動かしても肝心の精神の使い方が成っていなければ合気術の技とはならないからです。実にその点こそ合気術が、手や腕をきちんと動かしさえすれ後道ノズバリば技が効く柔術と根本的に異なる点なのです。 そして合気術を教えるのに、それとは根本的に異なる柔術の指導方法を無理やり当て嵌めて使っていたのですから、習得が難しくなるのはごく当然の結果だったのです。

直接的な教え方とは、どうすれば力の伝達を精神でコントロールできるか、其の方法を教えることで、決して手や腕の動かし方を教えるのではありません。そしてそれこそがこの本で私が提唱する「合気術を方法でなく原理で指導する」ということに他なりません。技が実現できる方法を直接的にそのものずばりで教えるのですから、習得し易くなるのは至極当たり前の事なのです。

合気術指導に掛ける私の抱負

従来から柔術を通信教育で教えようとする試みは方々で行われていますが、合気術を通信教育で行おうとして試みは嘗て無かったことと思います。その合気術は普通に道場へ通ってすら習得できる人はまれで、運よく習得できたとしても早くて数年から10年はかかると言われてきた合気術ですが、習得出来た人が少ない理由には以下が有ります。

1、合気術が使える先生は高齢者がほとんどなので、年々その数が減っている。従って合気術を教えてくれるところ(先生、道場)を見つけるのが容易ではない。

2、合気術は使えてもそれを教えられる先生の数はさらに少ない。従ってそうした自分では出来ても他人に教えられない指導者がいる道場には何年通っても一向に習得出来ない。

3、教えることが出来ても積極的に教えようとする先生はさらに少ない。合気術では高名な先生でも、その沢山いた弟子で合気術が本当に出来るようにまで上達した人はまれです。「教えるのはもったいない」と口癖のように言っていた高名な合気術の先生もいたくらいです。要するにごく限られた弟子にしか教えたくなかったのでしょう。それが従来はごく普通でした。

私は日本から遠く離れたオランダの地で25年間を暮らし、どうしても合気術を使えるようになりたくて誰からも教えてもらえず独力で合気術を習得しました。 折角習得したその合気術を私は弟子達全員に何とかできるようになってもらいたいと願い、ずっとその指導方法を試行錯誤しながら練って来ました。その過程で私は、一口に合気術と言っても、その掛け方、掛かり方、効果には幾つかの特有なパターンがあり、それはその合気術を実現するための原理の違いであるに違いないと気がつくに至りました。そしてそれらの原理を特定し、原理から教えれば弟子達は容易に習得できるはずだと考えたのです。

その原理から教える方法と、従来から行われてきた指導方法との違いは

従来の方法:経験から得た、原理を実現しやすくする方法、腕の動かし方、手の開き方などなどの体の動かせ方を教える

原理で教える方法:原理を実現するためにはどうすべきかを教え、そのための動きを行く通りも教える。また原理に基づいて第三者の力を借りて直ちに合気術の技が実現でき、そのときの感触を自分で体験できるので、それを目標にして各人は自分なりに最適な方法(体の動かし方)を試しながら練習できる 以上の明白な違いが有ります。要するに最初に到達すべき目標を体感し、後は其処へ到達する道を探るのです。目標も分からずに暗闇の中を闇雲に歩き回る従来の方法とは雲泥の差が有ります。

この原理で教える指導法を確立してからと云うもの、私の弟子達の合気術習得のスピードは見まごうばかりに早くなりました。オランダで開いていた道場に通ってきた弟子は、一人の例外も無く全員が上手下手の差こそ有れ、この合気術が出来るようになりました。合気上げなどは最初の練習日で出来始める人もいます。柔術は毎日の練習の積み重ねでレベルを上げますが、合気術はまったく異なります。10年以上のキャリアの有る人がなかなか習得できない技を、入門して2ヶ月ばかりの素人の女性が難なくできるようになってしまうことに、本当にしばしば遭遇します。
私は少しでも多くの武道ファンに合気術が出来るようになってもらいたくて、2010年から合気術を通信教育で指導するということを始めました。従来では教室に通って何年指導を受けても習得できない人が多かった合気術を、通信教育で出来るようにするということにチャレンジしたのです。そして通信教育だけで合気術が出来るようになった弟子達を輩出させ、自分の指導法に自身を得ることが出来ました。27年ぶりにオランダから日本に帰国しましたので、日本でも実際に指導が出来るよう常設道場を開設する事に決め、日本の誇る無形文化財ともいえる合気術の更なる普及を目指す所存です。

平成26年3月16日 合気柔術逆手道 第二代宗師 倉部 至誠堂 

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